ポチャとは?ソウルの屋台・ポジャンマチャで過ごす冬の夜ガイド
ポチャ(ポジャンマチャの略)は韓国の屋台酒場です。シートで覆われた店内にプラスチックの椅子が並び、湯気の立つスープの鍋と焼酎があり、「アンジュ」と呼ばれる料理をみんなで分け合います。ソウルでいちばんにぎやかなのは鍾路3街(チョンノサムガ)周辺で、乙支路(ウルチロ)と新堂(シンダン)がそれに続きます。料理は1皿およそ15,000〜30,000ウォン、焼酎は1本5,000〜7,000ウォンが目安。現金を少し持っておきましょう。路上の屋台にはトイレがないので、近くのトイレを使うことになります。
路上の屋台と屋内のポチャ
始まりは音から。バーナーのシュッという音と、おでんスープの鍋に当たるお玉の音。次に光。シート越しのオレンジ色の灯りと、皿3枚と緑の瓶でいっぱいになるほど小さなテーブルを囲むプラスチックの椅子。それがポチャです。
正式名のポジャンマチャは「幌馬車」といった意味です。最初は帆布の幌をかけた手押し車で、屋台がテントへと大きくなってもその名前が残りました。今の路上のポチャは歩道に据えられた屋台で、たいていオレンジ色か赤のシートに包まれ、手前に料理人、その奥にテーブルがいくつか詰め込まれています。寒くなると側面が下ろされます。透明なビニールのカーテン、テーブルの下のガスヒーター、内側から曇る窓。ポチャが寒い季節のものとされるのはそのためです。11月の風の中から、暖かくて混み合ったその小さな部屋に入る瞬間こそ、ここに来る理由の半分です。
ポチャという言葉は、もう一つの種類の店も指します。ソウルのあちこちに、ポチャを名乗ってその雰囲気を取り入れた屋内の居酒屋があります。壁に掛けたオレンジ色のシート、レトロなポスター、ステンレスのテーブル、メニューも同じ料理です。しっかりした暖房、廊下の先のトイレ、カード端末、8人のグループが座れる広さもあります。その中間にあるのが、普通の飲食店が夕方にテーブルを外へ出す通りで、韓国ではこのスタイルを「ヤジャン」、つまり屋外営業と呼びます。日常会話では、この3つすべてが「ポチャの夜」です。昔ながらのテントがいいならシートを目印に。寒さや大人数が気になるなら、屋内のポチャで同じ料理と雰囲気を、もっと気楽に楽しめます。
注文の仕方と予算
まず座ってから注文します。メニューはたいてい壁に貼ってあるか、テーブルのラミネートカードにあります。手を挙げるか「チョギヨ(すみません)」と声をかければ店員が来てくれます。覚えておきたいルールは一つだけ。ポチャは飲むだけでなく食べる場所なので、1テーブルにつき最低1品は注文します。混み合う夜は2品をお願いされる屋台もあります。値段は掲示されていますが、旬の海鮮は「時価」になっていることがあるので、牡蠣を頼む前に確認しましょう。
料理は「アンジュ」と呼ばれる、お酒と一緒に分け合うためのつまみで、量は2〜3人分が前提です。よくあるメニューはこんな感じです。
- オムクタン:透き通ったコショウの効いたスープに入った串おでん。寒い夜に最初に頼みたい一品です。
- タクトンチプ・ポックム:鶏の砂肝をニンニクと唐辛子で炒めたもの。歯ごたえがあり、焼酎によく合います。
- ゴルベンイ・ムチム:つぶ貝の甘辛和え。細い小麦麺の上にのせて出てきます。
- キムチジョン、またはパジョン:縁がカリッと焼けたチヂミ。マッコリとの相性は抜群です。
- オジンオ・ポックム:イカの赤唐辛子炒め。ご飯が一緒に付くことも多い料理です。
- ケランマリ:卵焼き。唐辛子にひと休みしたい人向けのやさしい一品です。
- クル:生牡蠣。晩秋から冬が旬で、唐辛子ソースとキムチを添えて食べるのが一般的です。
飲み物は、緑の瓶に入った度数16〜17%ほどの透明な蒸留酒・焼酎に、瓶ビール、白く濁った微発泡の米のお酒・マッコリ。焼酎をビールで割る「ソメク」を作るテーブルもたくさんあります。料理は1皿およそ15,000〜30,000ウォン、焼酎やビールは1本5,000〜7,000ウォンが目安。2人で2品と2本ほどなら、だいたい40,000〜70,000ウォンです。会計は最後に。店員と目が合ったら「ケサネ ジュセヨ(お会計お願いします)」と伝えましょう。
ソウルでポチャの夜を過ごせる場所
鍾路3街(チョンノサムガ) 今いちばん話題なのがここです。9月、シティガイドのタイムアウト(Time Out)が鍾路3街を2026年の「世界で最もクールな街」に選び、その理由の一つがポチャでした。日が暮れると、鍾路3街駅周辺の通りに屋台と屋外テーブルが広がります。楽園楽器商街から歩いて数分です。おすすめは、明るいうちに益善洞(イクソンドン)の韓屋の路地や、宗廟(チョンミョ)の石垣沿いの小道・西巡羅道(ソスンラギル)を歩き、灯りがともったら屋台へ向かう流れ。営業時間は屋台ごとに異なります。週末の20時以降は待つことになるので、早めに着くか平日に来るのがおすすめです。
乙支路(ウルチロ) 南へ少し歩くと、乙支路3街駅近くの「ノガリ横丁」があります。同じスタイルのビール版です。店はテントではなく普通の店舗ですが、主役は外。路地にプラスチックのテーブルがひしめき、生ビールのジョッキがトレイで運ばれ、名物のつまみは干したスケトウダラの幼魚「ノガリ」を唐辛子マヨネーズにつけて食べるもの。穏やかな夜はまるで路上パーティーのようで、冷え込むとみんな店の中へ移ります。
新堂(シンダン) 若いソウルっ子が「ヒップダンドン」と呼ぶこの街は、古い市場と新しいバーが混ざり合っています。新堂駅近くのソウル中央市場には、昔ながらの屋台と、夜遅くまで開いている新しいカウンターの店が並んでいます。隣の新中央市場では、9月に中区(チュング)が市場の「ヤジャン」を始め、34店舗が路地にテーブルを出し、その間でバスキングも行われました。開催日は区のお知らせで確認してください。昨年12月には新堂駅と市場を結ぶ地下通路が開通したので、風に当たらずに行けます。午後は6号線で1駅の東廟(トンミョ)のフリーマーケットと組み合わせて過ごすのもおすすめです。
現金・カード・トイレ事情
支払い 屋内のポチャはほぼ例外なくカードが使え、カード端末を置く路上の屋台も増えています。ただしすべてではなく、現金や銀行振込を好む店もあります。1万ウォン札を2〜3枚持っておき、気になるなら座る前に「カドゥ ドゥエヨ?(カード使えますか?)」と聞きましょう。手持ちのカードが古い端末と相性が悪いなら、ウォンをチャージしておけるWOWPASSのようなプリペイド式トラベルカードが予備として役立ちます。
トイレ 路上の屋台には専用のトイレがありません。店員が近くのビルの共用トイレを教えてくれ、ドアに暗証番号があればそれも教えてもらえます。ソウルの地下鉄駅には無料の公衆トイレがあります。実際のところは、座る前に済ませておき、いちばん近い駅の出入口を把握しておくのがコツ。屋内のポチャならこの心配はいらず、テントで始めて屋内で締めるグループが多い理由の一つになっています。
寒さ ヒーターが空気を暖めてくれても、足元は路面のままです。レストランではなく、1時間屋外にいるつもりで服装を選び、暖かい靴と脱ぎ着できる一枚を用意しましょう。ソウルの半分の人がシーズン中ずっと着ているロングダウンについては冬の持ち物ガイドで紹介しています。焼き物の煙はウールに染みつくので、いいコートはホテルに置いてきても。小雨や雪くらいなら屋台はたいてい営業していて、カーテンがいつもより少し下ろされるだけです。
ドラマの中のポチャと、テーブルでの習慣
見覚えがあると感じたら、それは韓国ドラマがこの場面を愛しているから。緑の瓶、プラスチックの椅子、深夜2時にやっと本音を口にする友人。ポチャは、韓国のドラマが登場人物に本当のことを言わせる場所です。『梨泰院クラス』では、主人公が最初に開いた店「タンバム」が小さなポチャ風の居酒屋でした。鍾路3街を訪れた人の中には、実際に座るずっと前から、このテーブルを画面で見ていたと話す人もいます。
本物は、ドラマよりずっと気楽です。いくつかの習慣を知っておくと役立ちます。自分ではなく同じテーブルの人のグラスに注ぎ、自分のグラスは誰かに注いでもらいましょう。料理はすべてシェアします。1人1皿という注文はしません。旅行者だとわかると隣のテーブルから話しかけられることもあり、そのときは気軽に乾杯を返すだけで十分です。1人でも歓迎されますが、ピーク時のテントより、静かな早い時間帯や屋内ポチャのカウンター席のほうが入りやすいでしょう。注ぎ方、両手でのグラスの持ち方、乾杯の作法をもっと知りたいなら、韓国のお酒のマナーのガイドをどうぞ。
Haruのノート
みんな遅い時間に行けと言います。屋台がにぎやかで満席になる頃に。でも、あえて6時に行ってみてください。その日最初のテーブルには料理人の目がしっかり行き届き、スープはちょうど煮立ったところ。ビニールのカーテンもまだ曇っていないので、外の通りが青く暮れていく一方で、テントの中がオレンジ色に染まっていくのを眺められます。
8時を過ぎれば店はお客さんのもので、それも楽しいものです。でも心に残るのは静かな最初の1時間。湯気の立つおでんスープがひと椀、グラスが二つ、そしてまるごと残った夜。